比叡三峰『天空への階段』フリー化


鹿川通信より転載


比叡三峰『天空への階段』フリー化

 2004年7月11日(日)、前夜の比叡駐車場キャンプでの酒が抜けず寝不足のまま、長友敬一(庵鹿川)、野下善秋(無所属)、緒方孝二(フェニックス)で比叡三峰に向かう。トンネル横のガードレールには立派なルート標識が付いていて、このエリアを育てていこうという庵鹿川の心意気が伝わる。
 比叡三峰『天空への階段』に取り付く。アプローチが全くないのが嬉しい。なお、オンサイトグレードは、以下の通りですが、二日酔いでハイだったりボロボロだったりで正確ではないかもしれません。再登の上、ご自由にご改訂下さい。


取り付きは道路からすぐ。何という快適さ! わかりやすさ!





 1P目=40m、5.11a(厳しいスラブ):野下リード(オンサイト)。全体的にホールドがカチ系で乏しいが、特に中間やや上の、左手のホールドがないところが核心だった。核心を越えても、ホールドが小さくて乏しいため、結晶や窪みを使って身体をずりあげることになった。


1P目をオンサイト・リードする野下さん。
1P目核心の野下さん。





 2P目=25m、5.10a(階段状):長友リード(オンサイト)。出だしすぐの、カンテ状の甘い右ホールドのみで足を上げるワンポイントが核心。後は快適な階段状。


2P目核心の緒方さん。
遙か下には綱の瀬川。この辺りで仲間がボルダーをしていた。





 3P目=50m、5.10b(凹角):野下リード(オンサイト)。スラブのトラバースで凹角に入り込む。そこからホールドの乏しい滑り台となる。左に小さなテラス状の突起があり、ピンはそこから直上しているものもあって、ルートファインディングに迷うが、滑り台の方を行く。その後、逆「く」の字状に折り返すようにカンテ脇の凹角を辿る。最後は快適なカンテで終了。


3P目出だしのスラブトラバースを終わり、凹角を登り始める野下さん。
3P目中間部、小リッジに立つ野下さん。この後、そこから降りて、凹角に戻った。





 4P目=30m、5.10b(チムニー):長友リード(オンサイト)。チムニーの入り口は宙に出ていく感じで、しかもピンが遠目に打ってあるという心憎い演出もあって、緊張させられる。前半は内面登攀というよりも、ステミングとチョックストーンを上手く使って高度を稼ぐ。後半はチムニーらしくなる。身体を入れ込んで、比叡には珍しい登りが楽しめる。抜けが渋いが、ステミングで上がれるだけ上がり込み、頭上のガバを捉え、トラバース気味に左のスラブへ乗り移った。なお、ルート中に切り株があったが、触らずに登った。チムニー内も少し泥っぽいところがあった。後で北山氏に伺うと「チムニーを掘り起こした」とのこと。開拓魂に頭が下がる思いである。


4P目のチムニー。
4P目の上部は、快適なチムニー登り。リードする長友。抜けが渋い。





 5P目=25m、5.11b/c(厳しいスラブ):「順番からいくと、野下さんですね」「いや〜、昨日2時間も寝てないし、二日酔いの頭痛が・・・」というやりとりをしていると、緒方さんが「じゃぁ、私が」。と言いつつも、ちょっとアルコールの匂いが・・・。というわけで初めに緒方が取り付くが、核心が解決できずに降りてきた。次に長友がトライ。核心は、足はスメア、左手もスメア、右手でスラブのふくらみをマントルしながら絶妙のバランスで足を上げ込み、右手をスメアに持ち替えて、左カチを取りに行くという結構渋いムーブだった。足はいつ滑り出すかわからず、身体全体も後ろに剥がされそうで、さすがの緊張に、絶叫する。そうやってやっと取った左カチに上がり込む辺りも、ボルトが右に離れすぎて、いささか怖い。その後、左上のカチが取れたので、絶叫しながら上がり込む。トラバースをして、終了点へ。


5P目。核心を抜ける長友。久しぶりの究極のクライム!





 終了点からは、下降路よりも懸垂下降の方が手っ取り早く取り付きまで降りられる。

 最終ピッチは、核心の手前まではフラッシングだったが、核心からはオンサイトだったので、実質上、オンサイト扱いでもいいのではないだろうか。とにかく、全ピッチとも、リードはオールフリー、ノーテンションによるオール・フリー化、ということになる。このルート『天空への階段』は、さすがにライン取りがすばらしく、スラブ・フェイス・チムニー・凹角と変化に富んでいて、飽きが来ないルートだ。「匠の技」と言っても過言ではない。充実した一日を下さった開拓者の方々に感謝する次第である。もちろん、フリー化のメンバーにも。

 なお、初期条件でのクライミングは、以下の記述を参考に! 天空への階段 in宮崎てこてこ山歩き




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